正常人の血液、尿などの体液について、銅、鉛、カドミウム、亜鉛、ガリウム、水銀、アンチモン、ヒ素の濃度分布について調べたところ、血液中に通常は見られない元素はカドミウムであり、血液中に比較的少ない元素は鉛であったが、血液と尿の濃度は、腎疾患の例を除けば、ある程度相関していることが判明した。 また有害元素と言われている、ヒ素や水銀とアンチモンは血液や尿のいずれにも比較的高濃度に含まれており、何らかの機能を有している可能性が示唆される。ガリウムについても比較的高濃度に含まれており、基礎的な生命機能に関わっている可能性が高い。必須元素とされる銅については体液中には比較的高濃度で含まれており、血液循環が障害されている疾患患者においては正常人より高濃度であることが興味深い。また亜鉛については小児や癌末期患者においてやや高い傾向が見られたが、これが癌の種類やステージの差違によるものかについてはなお検討中である。 また特に脳組織に異常が見られた事例においては、微量元素のうち銅の蓄積が大きい変化が見られ、このような事例においてはミトゴンドリアDNAのヘテロプラスミック変異が多重化しており、これは高齢者ほどに大きくなることが明らかになった。健康人の脳解析からはミトコンドリアDNAのヘテロプラスミック変異は0.5%内外の頻度で発生していることも判明した。また腎疾患患者にはカドミウムが蓄積される傾向があるが、この様な症例では同時に脳の病理学的変化の度合いが大きいことが明らかになった。肝疾患患者においても銅の蓄積は何らかの病理的変化を伴うことが多いが、鉛の蓄積とは並行していないことも明らかになった。
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