本年度は、サンプルコレクターをモンゴルに送付し、平成18年6月に、研究協力者であるスレン博士とミンジュール助手らにより、東北部ウンドゥクハーン及び東部のチョイバルサンにおいて、健常モンゴル人各200名から、口腔内粘膜を採取し、計400の粘膜細胞試料からDNAを抽出・定量した。これらの試料は、平成18年11月にミンジュール助手が日本に訪問した際に搬送され、その間にその一部が解析され、学会発表された。計400のDNA試料はIdentifilerキットにより解析された。また、両年度を通じて採取された計1000サンプルのうち、ウランバートル97名、オラーゴン95名、ダランザドガド100名、チョイバルサン117名、ウンドゥクハーン84名の計493名の男性のDNA試料については、AmpFSTRYfilerキットを用いて、17Y-STRローカスの型判定を行った。Identifilerの15STRローカスについても、アレル頻度を算出し、ハーディ・ワインベルグ平衡の検定を行ったところ、3つのテスト全てで乖離が見られたローカスはどの地域集団にもなかった。五地域集団間の各ローカスのアレル頻度分布の統計学的差異については、ダランザドガドーオラーゴン間、ダランザドガドーチョイバルサン間、オラーゴンーウンドゥクハーン間で4ローカス有意差が見られたが、他はそれ以下で、チョイバルサンーウンドゥクハーン間は全く有意差が見られるローカスはなかった。系統樹解析並びに多次元分析により、モンゴル人の五地域集団は、一つのヒト集団群を形成し、その遺伝的分布も周辺地域の地理的分布と非常によく一致していた。また、Y-STRsのハプロタイプ解析の結果からも、日本人のハプロタイプの中に、モンゴル人で観察されたハプロタイプとは全く異なり、日本人独自のクラスターを形成するハプロタイプ群が2つ観察された。
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