研究概要 |
本年度はフェノチアジン系、ブチロフェノン系、ベンゾジアセピン系、三環系抗うつ剤の向精神薬類について以下の検討を行った。 1.最適なイオン化法の検討並びにMS/MSマススペクトルライブラリーの作成 装置はAgilent HPLC1100とPE Sciex API2000 MS/MS、サンプル導入にはAgilent1100シリーズオートサンプラ(設備備品費により購入)を使用した。各薬剤標準品について、ESIおよびAPCI2種類のインターフェースによるイオン化法を検討したところ、chlorpromazine, methotrimeprazine, promazine, trimeprazine, clospirazine, triflupromazineの6種類のフェノチアジン系薬剤、 diazepam, etizolam, brotizolam, lorazepam, triazolamの5種類のベンゾジアゼピン系薬剤、haloperidol, floropipamide, pimozide, timiperone, bromPeridol の5種類のブチロフェノン系薬剤およびimipramine, amitriptyline, trimipramine, amoxapine, protriptyline の5種類の三環系抗うつ剤がいずれもHPLC/MS-ESI正イオンモードが最適であった。シングルMSによる各薬剤のマススペクトルでは、全てにおいて[M+H]^+の擬分子イオンがベースピークとして認められた。べースピークとなった[M+H]^+をプリカーサーイオンとして、各薬剤のフラグメンテーションの解析を行い、MS/MSマススペクトルライブラリーの作成を行った。 2.生体試料直接注入HPLC/MS/MS分析法の検討 試料の調整としては、1mlの健常人の血漿あるいは尿に6種類のフェノチアジン系薬剤、5種類のベンゾジアゼピン系薬剤、5種類のブチロフェノン系薬剤あるいは5種類の三環系抗うつ剤をそれぞれ添加した後、HPLC/MS/MS水系移動相である酢酸アンモニウムバッファー3mlを混和し、遠心分離(4,600g×30min)した上清に孔径0.2μmのフィルター濾過を加え、その20〜100μlをHPLC/MS/MS注入して分析を行った。その結果、35分以内に各薬剤が感度良く検出され、不純ピークとの重複が見られない良好な分析が可能であった。回収率は血漿において80〜91%、尿において78〜93%であった。検出限界は約0.1〜10ng/mlであった。今後、分離カラムの選択、移動相のpHおよびHPLC流速などを更に検討し、分析時間の短縮等を図り、各薬剤に最適な抽出条件の設定を行う予定である。
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