MDMAは本邦において麻薬に指定されており世界的に乱用されている。MDMAの乱用時にはエタノールを同時に摂取するのが一般的であるが、MDMA単独あるいはエタノール併用時に関する解析は行われていない。そこで、本年度は、SD雄性ラット(220〜260g)を用いてエタノールがMDMAに及ぼす影響について薬理学的な解析を行った。 初めに、エタノール投与量を検討したところ、1.5g/kgの腹腔内投与が最適であった。この投与量の最高血中エタノール濃度は、20分後で約1.5mg/ml、投与4時間後には検出されなくなった。酩酊度からみてヒト症例に類似していた。MDMAの投与量を10mg/kg、30mg/kgとし、各濃度においてエタノール投与群を20%エタノール、エタノール非投与群を生理食塩水で調整した。対照は生理食塩水のみを投与した。腹腔内に投与した後、前日に大腿動脈に留置したカテーテルから、経時的に採血を行い直腸内温度も記録した。投与4時間後に屠殺し脳を摘出した。採血後の血液は固相抽出後、無水トリフルオロ酢酸で誘導体化を行い、ガスクロマトグラフ質量分析計でMDMAの定量を行った。 MDMA投与後、10〜15分後に最高血中濃度に達した。最高血中濃度は何れの投与量においてもエタノール投与群の方が高く、統計的に有意差を認めた(Mann-Whitney検定、p<0.05)。また、血中MDMA濃度は2コンパートメントモデルに一致して低下したが、吸収相以外における有意差は認められなかった。投与4時間後の脳内MDA、MDMA濃度は何れの群において有意差はなかった。また、投与後の体温は、エタノール投与群は低下したものの、MDMA投与群は最大2度程度上昇した。SDラットにおいては、体温変化は観察しにくいという報告もあるが、十分に観察可能であった。
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