ミトコンドリアで生成されるnitric oxide(NO)が、酸化ストレスさらにアポトーシスに関与することが示唆されている。Thomらは、一酸化炭素(CO)中毒ではNO生成が増加し、これが細胞毒性に関与すると報告しているのに対し、我々は、一酸化炭素(CO)中毒ではNO生成が抑制されると報告している。そこで、CO中毒によるヒドロキシラジカル(・OH)生成にNOが関与するか否かについて検討し、次のような結果を得た。 1)我々は、NO合成酵素(NOS)の基質、すなわちNOの前駆体であるL-arginine(L-Arg)およびNOSの基質とはなりえないD-Argは、いずれも単独ではCOによる・OH生成を抑制することをすでに報告している。NOS阻害薬N^G-nitro-L-arginine methyl ester(L-NAME)は、COによる・OH生成を抑制し、L-Argはこの抑制を解除した。D-Argも同様の作用を有していたが、L-NAMEとD-Argの併用により・OH生成はCO単独の場合よりも増加した。 2)L-NAMEとは異なるNOS阻害薬N^G-monomethyl-L-arginine(L-NMMA)は、COによる・OH生成を増強し、L-Argはこの増強を部分的に解除したが、D-Argは、L-NMMAによる増強をさらに増強した。 3)cGMP生成をNO生成の指標とした場合CO中毒はcGMP生成量を増加させたが、この増加はNOS阻害剤により影響を受けなかった。 以上の結果より、CO中毒による酸化ストレスには、NO生成それ自体よりもNOSが一部関与する可能性が示唆された。
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