一酸化炭素(CO)によるラット線条体のヒドロキシラジカル(・OH)生成におけるミトコンドリア呼吸鎖の関与についてin vivo microdialysis法を用いて検討し、次のような結果を得た。 (1)ミトコンドリア呼吸鎖のcomplexIVを阻害するCOとNaCNは、相加的な・OH生成促進作用を示した。 (2)1-methyl-4-phenylpyridium(MPP^+;complex I阻害剤)とCOも、相加的な・OH生成促進作用を示した。 (3)malonate(complex II阻害剤)とCOは、相乗的な・OH生成促進作用を示したが、malonateとNaCNではそのような作用は観察されなかった。 また、ミトコンドリア呼吸鎖の阻害作用を有するnitric oxide(NO)は、酸化ストレスを増強するから、COによる・OH生成におけるNO系の関与について検討したところ、 (4)N^G-nitro-L-arginine methyl ester(NOS阻害薬)は、COによる・OH生成を抑制し、L-Argはこの抑制を解除したが、D-Argも同様の作用を有しており、この場合・OH生成はCO単独の場合よりも増加した。 (5)N^G-monomethyl-L-arginine(L-NMMA; NOS阻害薬)は、COによる・OH生成を増強し、L-Argはこの増強を部分的に解除したが、D-Argは、L-NMMAによる増強をさらに増強した。 (6)COは、NOS阻害剤存在下でもcGMP生成量を増加させた。 これらの知見より、COによる・OH生成にはミトコンドリア呼吸鎖complex IVの阻害作用に加えて、それ以外の作用の関与が示唆された。また、CO中毒による酸化ストレスには、NO自体よりもNOSが一部関与する可能性が示唆されたが、malonateとCOの相乗作用におけるNO系の役割についてはさらに検討が必要である。
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