研究課題
本研究の目的は、法医実務や救急外来における迅速診断に応用可能なスクリーニング法の開発である。本年度は、最近中国製餃子で問題になった有機リン系農薬の分析を試みた。抽出法として固相マイクロ抽出(Solid Phase Microextraction: SPME)法、検出には有機リン系化合物を選択的に高感度分析するGC-FPD(FPD:炎光光度検出器を搭載したGC:ガスクロマトグラフ)を用いた。最初に、各薬物の標準品をメタノールで溶解し、GC-FPDに直接注入して、それぞれの薬物の保持時間を測定した。次に各薬物を1mlのヒト全血に添加し、さらの過塩素酸と炭酸カリウムを加わえて混合した後、遠心分離し、その上清にSPMEファイバーを浸す(直接浸漬)することにより、ファイバーに目的物質を吸着させた。ついでそのファイバーをGCの気化室内に露出して目的物質をGCに導入し、測定を行った。各薬物の回収率は0.03-2.19%であり、また検量線はフォサロン(200-800ng/ml)を除き、25-400ng/mlの範囲で直線性を示し、検出限界は、ジクロルボス、フェニトロチオン、及びマラチオンは0.2ng/ml以下、フェンシオンは1.6ng/ml以下、プロフェノフォスとエチオンは6.3ng以下、イソキサチオンは25ng/ml以下、そしてフォサロンは200ng/ml以下であった。血中致死濃度は、フェニトロチオン16ng/ml、マラチオン1〜2ng/mlなどが報告されているが、本法による検出限界はこれらの数値をはるかに下回った。測定に要する時間は、1時間弱であるが、これはGCの昇温条件の調整などにより、十分に改善の余地がある。これらの結果と操作の簡便性から、法医実務への応用が十分可能であると考えた。
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Forensic Toxicol 25
ページ: 100-103