覚せい剤は光学異性体が存在し、その人体に与える影響に差があると考えられる。覚せい剤の人体への影響は種類によって異なると考えられるが、乱用された覚せい剤の種類を明確にした中毒の評価についての報告はない。その理由として、光学異性体を分析する方法が複雑で時間がかかることが挙げられる。そこで、本研究では、覚せい剤の光学異性体の分析をガスクロマトグラフィー・質量分析法(GC-MS)により、簡素かつ短時間で行える方法を開発する。GC-MSで光学異性体を分析する方法は2種ある。1つは光学異性体分離カラムを使った方法(方法A)、2つ目は光学異性体分離曜誘導体を調製後レギュラーカラムにより分離する方法(方法B)である。本年度は、方法Aの試料調製は気化平衡ヘプタフルオロブチリル化固相マイクロ抽出、方法Bにはけいそう土カラムを使ったトリフルオロプロリル化抽出を開発した。分離に用いたカラムは、取りあえずレギュラーサイズのカラムを使った。内部標準物質にはL-フェニルアラニンから合成されたL-アンフェタミン-d3、L-メタンフェタミン-d6を使って、尿試料から覚せい剤光学異性体の分離分析が定量的にできる方法ができた。今後の課題としては、次のことが挙げられる。この方法を応用し、血液や体組織から分析するためには、クリンナップを入れる必要があることも分かり、検討することになった。カラムについてもより分離能が高く、より短時間で分離できるカラムの選択を行う課題が残った。方法の普及のためには、内部標準物質が安価で入手できるものが必要であるので、その検討も行うことになった。
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