平成17年度に大筋導入していた覚せい剤光学異性体分離分析の2つの方法を、今年度は法中毒実務的観点から、迅速かつ正確にできるよう技術を改良することを目的に研究を行った。方法1.光学異性体分離用誘導体トリフルオロアセチルプロリル化を珪藻土カラムを使って、抽出と同時に行う簡素法で試料調製を行い、通常の薬物分析に使用しているカラムを使ってGC-MS分析を行う。方法2.アミン基、水酸基などの誘導体ヘプタフルオロブチリル化を気化平衡瓶で行い、そのまま自動で固相マイクロ抽出を行い、光学異性分離カラムを使ってGC-MS分析を行う。本年度、1については、試料調製に関してはトリエチルアミンの添加により誘導体化の再現性が向上し、測定カラムの内径を0.1mmと小さくし、高圧下でキャリアガスを流すことで、短時間で高感度な方法を確立することができた。この方法は、乱用者の尿分析に適しており、覚せい剤乱用被疑者の確定に有用である。2については、GCーMS測定は、カラムの性質上、サイズの縮小化が困難であったので、従来のサイズで検討せざるを得なかつた。詳細な条件検討により、測定時間は5分ほど短縮できた。基本的な試料調製は変更はなかったが、剖検試料への応用を検討した。血液や体組織では、気化平衡法において、脂質の障害で極めて低感度分析であったため、脂質の除去を珪藻土カラムを使って簡素化し、測定の感度を数倍高かめることが可能になり、腐敗試料などでも高感度分析を実用的に行えるようになった。方法1では、乱用者の摘発の分野で、方法2では、法医学の分野で有用となるものと思われる。
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