「糖尿病に関する否定的認知」を測定するための質問紙を作成し、糖尿病治療成績との関連を調べるために、以下のような調査、解析を行った。 1.「糖尿病に関する否定的認知」を測定するための質問紙の候補項目の作成。 2.1を予備的に糖尿病患者に施行し、項目分析を行い、弁別力の劣る項目を除いた。 3.精選した2の質問紙と、以下の6種類の既存の心理テストを、1型糖尿病患者約180名、2型糖尿病患者約380名に施行した。 (1)Problem Areas in Diabetes Survey (PAID) 糖尿病に関する苦悩に関する心理テスト (2)Beck Depression Inventory (BDI) うつ病に関する心理テスト (3)Automatic Thoughts Questionnaire (ATQ)自動的に浮かんでくる否定的な考えに関する心理テスト (4)Expanded Hopelessness Scale (EHS)絶望感に関する心理テスト (5)Self-esteem Test (SES)自己評価に関する心理テスト 4.これらの患者の、以下の医学的・人口統計学的データを、診療録により調査し、記録した。 年齢、性別、糖尿病の型(1型、2型など)、糖尿病発症年齢、治療法(1.自己管理のみ、2.血糖降下剤、3.インスリン注射)、HbA1c(血糖コントロール)、糖尿病慢性合併症の有無と程度、など。 5.1型糖尿病、2型糖尿病に分類し、それぞれについて質問紙の因子分析を行った。 6.それぞれにおいて、数種類の因子が抽出された。 7.「糖尿病に関する否定的認知」およびその諸因子と、既存の心理テストの得点との間に相関が認められた。 8.「糖尿病に関する否定的認知」およびその諸因子と、HbA1cとの間に相関が認められた。 今後、「糖尿病に関する否定的認知」とHbA1cなど医学的因子との関連をさらに明確にするために、フォローアップ調査を施行する予定である。また、心身医学的介入が「糖尿病に関する否定的認知」を軽減させるかどうか、その結果HbA1cも改善するかどうかなどの、介入研究も施行したい。
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