研究概要 |
対象とデータ収集:「福岡大腸がん研究」への参加に同意し、ストレス調査票に回答した患者494人と対照住民805人を解析対象とした。生活習慣や患者の臨床に関して必要な情報は、面接調査および診療録等より得た。 データ処理:ストレス調査票のデータを電子ファイルに入力し、あわせてデータクリーニング、すなわち矛盾した記録や不適切な情報の有無を検索した。また、必要に応じて原本との比較作業等を行い、データの修正を行った。生活習慣や臨床データとは、整理番号によってリンクさせた。 統計解析:住民対照者において、ストレス調査票の各尺度について4分位のカットポイントを求めた。第1分位(最低得点群)を基準として、第2、第3,および第4分位(最高得点群)の大腸がんのオッズ比をそれぞれ求めた。オッズ比とその95%信頼区間の推定、および傾向性(トレンド)の検定、ならびに共変量の補正には多重ロジスティックモデルを用いた。 結果:ストレス調査票尺度のうち、感情抑圧や喪失・失望と関連した尺度はいずれも大腸がんリスクと関連していなかった。しかし、ヒステリー性パーソナリティと関連した「両価性」および「利己性」尺度は、得点が高いことがリスクの低下と関連していた。尺度得点の4分位でカテゴリー化した場合、最低得点者に対する最高得点者のオッズ比(95%信頼区間)は、両価性が0.7(0.5-0.9)、利己性が0.6(0.4-0.9)であった。体格(肥満の有無)や生活習慣要因(身体活動、飲酒、喫煙など)を補正しても、これらの関連は変わらなかった。 次年度の課題:食事要因のうち、赤身肉、野菜や果物の摂取が大腸癌リスクと関連することが示唆されており、またこれらの要因とパーソナリティが相関する可能性が高い。したがって、パーソナリティと大腸癌との関連をみる際に、これらの食事要因の交絡を検討することが次年度の課題である。
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