研究概要 |
本研究においては、高齢糖尿病患者を対象に、その認知機能を評価し、糖尿病性認知症(特にアルツハイマー型認知症でのMCIに相当する軽度認知機能障害)について検討している。対象は前年度までの選択基準で選んだ結果、今年度はさらに12例の患者が新規にエントリーされ、follow upした患者も含めのべ174例となった。検査は心理士がMMSEとリバーミード行動記憶検査(RBMT)を行った。その結果新規患者12例中も含め、最終的にはMMSEが24点以上でRBMTのSPSが15点以下のいわゆるMCIに相当する患者は19例、MMSE24点以下、RBMTのSPS15点未満の早期ADに相当すると考えられる患者が26例、MMSE、RBMTとも正常で認知機能障害を認めない患者が113名であった。アルツハイマー病患者では髄液中のAβ1-40,42濃度が診断に役立つことが報告されているが、本研究の対象としている糖尿病患者では髄液検査を行うことは困難である。そのため未だ詳しく検討されていない血漿中のAβ濃度の測定を行いアルツハイマー病(AD)患者群と比較検討した。その結果血漿Aβ1-40はDM群において46.6±14.9pmol/Lであり、AD群では60.79±16.2pmol/Lで、AD群で有意に高値であった(P<0.01)。しかし血漿Aβ1-42はDM群5.9±2.1、AD群6.6±2.3pmol/LでAD群で高値傾向にあったが有意差はなかった。またDM群の中で心理検査の結果から上記のMCIあるいはAD相当の障害があると認められた5例に関して同様の検討を行ったところAD群とAβ1-40,42ともに有意差は認められなかった。
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