研究概要 |
本年度は前年度までと同様,BDI-II日本語版,SF-36日本語版による質問紙調査を行うとともに,さらに身体症状に影響する別の精神的因子として抑うつとともに重要な不安に着目した.対象は本学附属病院総合診療部の初診患者のうち同意の得られた方である.不安については状態・特性不安検査STAI (State-Trait Anxiety Inventory)を施行した. 本年度の結果として,調査を終了した149名(男/女:76/73名,年齢40.5±14.3歳)のうちBDI-II 14以上の軽症以上のうつ病性障害疑い例は28名(18.8%)であった. さらに新たに着目した不安についての調査を終えた54名(男/女:32/22名,年齢41.3±13.0歳)の結果を示す.特性不安に対して有意な差(Wilcoxon rank-sum test)がみられた症状は,全身倦怠感(ありvsなし:46.1±1.4 vs 39.9±2.4)と眩暈(ありvsなし:48.3±2.9 vs 41.7±1.3)のみであった.状態不安に対しても,全身倦怠感(ありvsなし:47.4±1.7 vs 41.0±1.9)と眩暈(ありvsなし:50.0±2.6 vs 42.8±1.5)であり同様の傾向を示した.特性不安・状態不安・抑うつの程度が互いに独立して身体的QOLを低下させる因子であるか否かを検討するため,SF-36の身体的サマリースコア(PCS)を従属変数,年齢・性別・特性不安・状態不安・BDI-IIスコアを独立変数とした重回帰分析を行ったところ,PCSを有意に低下させる因子として示されたものは年齢(standardized coefficient -0.2, p=0.048)とBDI-IIスコア(-0.7, p=0.018)のみであり,不安の程度が身体的QOLに関連しているとはいえなかった. 来年度も,引き続き対象者数を増やして検討を重ねる予定である.
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