研究概要 |
本年度は前年度までと同様,受診時の身体症状,BDI(BeckDepressionInventory-SecondEdition)日本語版,S:F-36(Short Form-36)日本語版による質問紙調査,および身体症状に影響する別の精神神経学的因子として抑うつとともに重要な不安に着目し,以下の調査を行った.1)患者のどの身体症状の存在が不安の程度を悪化させるかを検討した.2)不安の程度と健康関連QOLの身体的指標との関連を,抑うつの程度の影響を考慮し評価した. 本学附属病院総合診療部外来の初診患者のうち同意の得られた対象者に,状態・特性不安検査STAI(State-Trait Anxiety Inventory)・BDI-II・SF-36の各質問票と,25の身体症状の調査を行った.BDI-IIはうつ病性障害の評価尺度である。SF-36は健康関連QOLを身体的・精神的サマリースコアとして算出するものである.Wilcoxonrank-sumtestにて検討したところ,特性不安が有意に高かった症状としては,全身倦怠感(有/無:46.5±1.3/40。3±2,2),眩量(50.7±3.8/43.0±1.2),ふらつき(46.5±2.2/43.5±1.4)であった.状態不安でも,同様の症状において有意に高い結果を示した。SF-36の身体的サマリースコアに対する関連を状態不安・特性不安・BDI-IIスコア・年齢・性別を独立変数とした重回帰分析で検討したところ,BDI-IIスコアは有意な関連を示したが特性不安・状態不安とも有意とはならなかった,特性不安・状態不安の双方とも,全身倦怠感・眩輩の症状の存在で有意に高く,両者において影響する身体症状には違いがみられないことが考えられた.また,身体的QOLには,抑うつの程度の影響が不安よりも大きいことが示唆された.
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