研究概要 |
前年度までと同様,状態・特性不安検査STAI(State-Trait Anxiety Inventory)・BDI-II(Beck Depression Inventory)・SF36(Short Form-36)の各質問票と,25の身体症状の調査を行った.STAIは不安を状態不安・特性不安に分けて測定するものである.BDI-IIはうつ病性障害の評価尺度である. SF-36は健康関連QOLを身体的・精神的サマリースコアとして算出するものである.検討した概要は,1)患者のどのような身体症状の存在が不安の程度を悪化させているか.2)健康関連QOLの身体的指標に対し,不安の程度がいかに影響しているか.の主に2点である. 本学附属病院・総合診療部外来の初診患者のうち,文書・口頭による説明のもとで同意の得られた対象(男/女:64/45名,年齢41.8±13.8歳)の結果を示す.Wilcoxon rank-suin testにて特性不安が有意に高かった症状は,全身倦怠感(有/無:46.1±1.2/38.7±1.4),眩量(49.3±3.4/41.7±1.0),ふらつき(46.0±2.0/42.0±1.1),胸痛・胸部圧迫感(47.5±2.3/41.6±1.1)であった.状態不安では,これらに加え胸やけ(56.5±5.4/43.6±1.0)で有意に高い結果を示した.SF-36の身体的サマリースコアに対する関連を状態不安・特性不安・BDI-IIスコア・年齢・性別を独立変数とした重回帰分析で検討したところ,BDI-IIスコアは有意な関連を示したが特性不安・状態不安とも有意とはならなかった.特性不安については,全身倦怠感・眩量の症状の存在で有意に高く,状態不安ではこれらに加え胸やけの存在で有意に高く,特性不安・状態不安ともに類似した傾向にあると考えられた.また,身体的QOLに対しては,抑うつの程度の影響が不安よりも大きいことが示唆された.
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