パニック障害患者を対象とした治療用バーチャルリアリティ(以下VR)エクスポージャーのソフトウェアを開発し、実用化できるシステムを構築した。健常者を対象としたユーザビリティ評価を行い、より使いやすい機能を追加した。また、健常者を対象としたVRエクスポージャー時の光トポグラフィー(以下NIRS)による脳機能評価、心拍変動係数による自律神経機能評価を行った。ついで、パニック障害患者を対象にVRエクスポージャー治療を行い、効果測定ならびに現実場面でのエクスポージャー治療との比較研究を行った。その結果、回避場面(今回は地下鉄乗車場面)の暴露によるリアルタイムでの症状計測ならびに効果測定に有用な診断・治療機器であることが示唆された。現実場面でのエクスポージャー治療に対して、治療時間の短縮、生体反応のリアルタイムモニターおよび即時的介入を可能にし、ひいては医療費の節減につながるという利点が示唆された。これらの成果をもとに、実地臨床で活用できるパニック障害治療用VRエクスポージャーのマニュアルを作成し普及に努めたい。 本研究で開発したVRソフトは、実際の地下鉄場面をビデオ録画し、それをCGにて再構成するとともに、三次元画像、インタラクション技術を駆使した視覚的映像とともに音響・振動などの設定により、現実空間に近い環境を提示できる独創的なものである。将来的に、飛行機場面、公衆でのスピーチ場面など地下鉄乗車以外の回避場面に対するVRソフトを開発し、応用場面を拡大することも視野に入れている。 以上の研究は、早稲田大学人を対象とする研究等倫理委員会にて承認を得た後に、対象者の同意を得た上で実施された。
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