【目的】本研究では水太りタイプの肥満症に効果を認める防巳黄耆湯を使用した。肥満症モデルに対する防已黄耆湯の肥満予防効果、血中サイトカインの変動および脂肪細胞への作用を検討することを目的とした。 【方法】SD系雌性ラットに卵巣摘出手術を施行し肥満を誘導した。治療群は3群とし、実験開始3カ月後に採血し、体重および各臓器の重量を測定した。また摘出した脂肪細胞像を観察した。血清マーカーにはT-chol、TG、Glu、血中インスリン(IRI)、アディポネクチン、TNF-α、INF-γ、IL-10、IL-6、IL-4、IL-2、IL-1α、IL-1β、GM-CSFを測定した。子宮傍脂肪組織よりリアルタイムRT-PCRにてmRNAの発現量を測定した。測定項目は(1)アディポネクチン(2)PPAR-γ(3)レジスチン(4)TNF-αの4項目とした。 【成績】摂食量に関しては各群で有意な変化を認めない。体重変化は1%治療群で有意な体重増加抑制を6週後(20週令)で認めた。子宮傍脂肪組織重量において有意差を認めた。脂肪組織の染色像においてコントロール群と比較し1%治療群で脂肪細胞の肥大が抑制されていることを認めた。血清TNF-αは3カ月後において対照群と比較し濃度依存的に有意な上昇を認めた。脂肪組織のmRNA発現量はTNF-α以外では有意差を認めなかった。 【総括および結論】防巳黄耆湯はエストロゲンの消退による肥満症モデルラットに対して体重増加抑制作用と脂肪細胞の肥大化抑制を認めた。その作用機序として変動を示したTNF-α産生増加が関与していることが推察される。防巳黄耆湯を投与すると、脂肪細胞の肥大化が抑制されているにもかかわらず脂肪細胞中のmRNA発現量および血清TNF-α産生量が充進していた。通常増加した血清TNF-αによりアポトーシスが誘発されるが今回の実験ではこのことは確認していない。防巳黄耆湯は脂肪細胞の肥大を抑制するために細胞分裂抑制因子のTNF-αを分泌させ肥満を予防したことが推察される。しかしこの作用機序を証明するには脂質代謝すべての解析が必要でありこの研究からは結論付けれない。多くの報告が示すとおりTNF-αの増加は生体にとって有益なものは少なく再検討する必要がある。今回の報告から、直ちに臨床現揚で応用することは危険であり十分な安全性と有効性の検討が必要である。
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