研究概要 |
動物実験:発熱反応と心理的ストレスによって生じる高体温症に関与する脳内部位を比較するために,発熱の主要媒介物質であるプロスタグランディンE2の受容体の1つであるEP3受容体ノックアウト(KO)マウスとワイルドタイプ(WT)マウスにリポポリサッカライド(LPS)を腹腔内注射し,2時間後の体温と,Fos-like immunoreactivityの発現している脳内部位を比較した. LPS投与2時間後,WTマウスでは約1℃の発熱を生じたが,EP3受容体KOマウスでは発熱は生じなかった。最も顕著なFos発現パターンの差は脊髄中間質外側核(IML)で見られた.WTマウスでは多くのFos陽性細胞がIMLで見られたのに対し,EP3受容体KOマウスではほとんど見られなかった.一方,末梢の炎症性情報を中枢に伝える延髄孤束核,発熱,ストレス反応に関与する視床下部諸核(視索前野腹内側部,室傍核,後部視床下部),視床下部からの遠心路をなす中脳水道周囲灰白質,青斑核,縫線核群では,両マウスとも多くのFos陽性細胞が見られ,差は見られなかった.この結果はJ.Comp.Neurol.に投稿準備中である.現在,心理的ストレスとしてケージ交換ストレスを加えた時のFos発現パターンとLPSによる発熱時の結果を比較している. ヒトでの研究:心因性発熱にサイトカインが関与するかどうかを検討する目的で,当科を受診した心因性発熱患者において,発熱性サイトカイン(IL-1,IL-6,TNFα,IFN)と解熱性サイトカイン(IL-10)の血中レベルを,体温の高い時と低い時で比較しているが,明らかな傾向は得られていない. また,慢性ストレス性微熱に対する治療薬として,選択的セロトニン再取込み阻害薬である塩酸パロキセチンが有効であることを明らかにし,報告した(論文1,2).
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