研究概要 |
(ヒトでの研究) (1)心因性発熱患者の発熱機序:(1)炎症性サイトカインの関与の有無.心因性発熱患者10名において,発熱時(平均腋窩温37.6℃)と解熱時(36.8℃)の発熱性サイトカイン(IL-1,IL-6,MIP-1)と解熱性サイトカイン(IL-10)の血中レベルを比較したが,両群で差はなかった.またストレスインタビュー(1時間),鏡映描写試験(10分)で体温が0.5℃以上上昇する症例があったが,血中IL-6レベルの上昇は体温上昇後に生じた.その一方で体温上昇に従って顕著な血中カテコルアミンレベルの上昇が生じた.(2)セロトニン神経系機能低下の関与:慢性ストレス下で慢性微熱が三ケ月以上続いている心因性発熱患者5名に選択的セロトニン再取込み阻害薬である塩酸パロキセチンを投与すると,腋窩温が有意に低下した(日本心療内科学会10,5-8,2006).またマレイン酸フルボキサミンも有効であった.したがって心因性発熱には炎症性サイトカインは関与せず,脳内セロトニン神経系の機能低下,交感神経の過剰反応性が関与すると考えられた.(2)体温と倦怠感を同時に記録してもらうチェックシートの開発:それを用いることで,心因性発熱患者の中には,わずかな体温上昇でも倦怠感が増加する症例が存在し,それが微熱程度の体温上昇を苦痛と感じる理由の1つと考えられた.(3)疫学:心因性発熱に関する疫学調査がないので,我が国における心因性発熱の全報告195症例をまとめた.年齢は男女ともに13歳にピークがあり,性差は男性:女性1:1.19であった. (動物実験) 慢性心理的ストレス性高体温ラットモデルを用いた薬理学的検討:ウイスターラットを用いて,慢性ストレスによる慢性微熱モデルを作成中である.
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