研究概要 |
AR42J細胞は膵共通前駆細胞の性質を持つ。アクチビンAとベータセルリンの作用でインスリン産生細胞へ分化する時、タイトジャンクション(TJ)を形成しないにも関わらず、Jam-1は著明に発現が亢進し、TJからのシグナル伝達分子であるPAR-3やatypical PKCλも発現が亢進した。アドヘリアンスジャンクション(AJ)に局在するE-カドヘリンは発現が変化しなかった。極性をもったMDCK細胞において、Jam-1はTJに存在するが、過剰発現をさせると細胞内にもドット状の発現がみられ、細胞内小胞にも存在しうることが予想された。Jam-1はインスリン産生細胞に発現すると予想され、膵ラ氏島を免疫組織化学の手法を用いて検討したところ、驚くことにJam-1は膵β細胞ではなく、膵α細胞に発現しており、しかも発現は細胞間接着部位だけでなく、細胞内にもドット状に認められた。最近、TJやAJの蛋白は結合部にとどまるのではなく、分裂や増殖にあわせて、細胞内をリサイクリングしていることが明らかとされた。Rabファミリーに属するRab3BやRab13がこのリサイクリングに関与しているとの報告があり、MDCK細胞を用いて2重染色を行った所、Jam-1はRab3BやRab13と同じ細胞内小胞に存在していることが明らかとなった。以上より、1.AR42J細胞がインスリン細胞に分化する際、TJを形成しないにも関わらず、Jam-1およびその情報伝達系が活性化すること、2.Jam-1はTJだけでなく、細胞内のRab3B,Rab13の小胞上にも存在すること、3.膵ラ氏島ではβ細胞ではなく、α細胞に発現していることが明らかとなった。Jam-1は膵内分泌細胞の分化に大きな役割を果たしていることが予想されるが、分化のどの段階に影響を及ぼしているかが興味深く、次年度の検討課題である。
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