研究概要 |
HBVウイルス感染患者からウイルスの排除を可能にする治療ワクチンの開発を目指す基礎的検討を行った。マウスに抗CD25抗体(200μg)を投与して抑制性T細胞(Treg)を除去した後、HBs Agを発現するプラスミドDNAを用いてマウスを免疫した。細胞性免疫応答のpeakであるDay10及びmemory期であるDay30におけるHBV特異的なCTLの誘導を比較した。Day10では,CD8陽性T細胞のうちの7.1±2.0%がHBVに特異的に反応していた。Treg除去マウスでは12.7±3.2%ものT細胞がHBVに特異的反応を示していた.また,Day30ではHBV特異的T細胞はTreg存在下で1.3±0.4%しか認められなかったのに対して,Treg除去マウスではで2.6±0.9%認められた.Tregを排除することによりDNA免疫法を用いてHBV特異的CD8陽性T細胞を非常に高頻度に誘導しうることを証明した。細胞内IFN-γstaining法を用いてIFN-γ産生刺激に必要なペプチド量のtitrationを行った。Treg排除下において誘導されたHBV-specific CTLは、10^<-10>M/Lのペプチドにも反応可能な、非序にavidityの高いCTLであった。 肝炎ワクチンに際して、Tregを除去することによって,ウイルス特異的なCD8陽性T細胞の誘導を総数(%)だけでなく質的にも高めることが出来ることを証明した。また,抗原を認識したT細胞が、expansion-contraction-memoryと分化成熟していく過程においても,抑制性T細胞は抗原特異的CD8陽性T細胞のprimingとexpansionを抑制し,memory T細胞プールの形成にも関与していることが証明できた。抑制性T細胞の排除は今後慢性B型肝炎におけるHBVへの免疫学的治療戦略として重要であると考えられる。
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