研究概要 |
本邦で開発された炎症性腸疾患に対する白血球除去療法を循環系白血球除去に伴う骨髄造血刺激という発想に基づき、我々が明らかにした組織修復期に骨髄より動員される腸管上皮細胞幹細胞(Nature Med 2002;8:1011)動員システムに白血球除去療法を応用する独創的な治療法の開発に着手した。現在、白血球除去療法前後に循環末梢血中のCEA, keratin, HLA, CD34などの上皮系幹細胞のマーカー候補の探索中である。 また、白血球除去療法前後において体外で選択的に病因的サイトカインを強く産生するCD14^<dull>CD16^+分画単球を選択的に除去していることを明らかとした。本細胞はHLA-DR抗原を発現しTNF-α産生単球細胞ばかりではなく他の炎症性腸疾患関連サイトカインであるIL-12産生単球細胞をも除去していることを明らかとした。このことは近年広く臨床応用されている抗TNF-α抗体療法や現在臨床治験が行われている抗IL-12抗体療法といった生物学的製剤に予想される副作用を軽減できる白血球除去療法の位置付けと考えられた。さらに強力にTNF-α除去を目的とした次世代白血球除去療法を目的に白血球除去樹脂に抗TNF-α抗体を吸着固定したミニカラムを作成し再び体内に抗TNF-α抗体が還元せずより選択的な次世代白血球除去療法を開発中である。 さらに、白血球除去療法前後において体外で選択的にナイーブCD4細胞に比しメモリーCD4細胞を除去した。メモリーCD4細胞を詳細に検討したところ、CD62L(+)のcentral-memoryタイプに比し、CD62L(-)のeffector-memoryタイプの免疫学的にはリンパ節に比し腸管局所へ移行し腸炎炎症に関連する細胞群をより選択的に除去していることが明らかとなった。
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