本研究は、胃粘膜組織の正常な構築に重要な役割を果たすことが示されている増殖因子Regの、その他の消化管における機能、特に発生分化過程における役割を解析するために、Regノックアウトマウスの解析を中心に据えて進行中である。 Regノックアウトマウスの解析により今回初めてRegの小腸細胞増殖への関与が示された。AdultのRegノックアウトマウスの小腸粘膜を解析すると絨毛内の細胞密度が低く、陰窩のPCNA染色陽性増殖細胞数も減少しており、小腸幹細胞の増殖能が低下していた。小腸幹細胞の分裂娘細胞は、幹細胞の分裂により押し出されて絨毛上を移動して管腔側へと登っていくとされているが、この速度がノックアウトマウスでは正常にくらべ明らかに遅いということもBrdUラベルにより細胞の位置をトレースすることにより確かめられた。小腸の増殖をコントロールする増殖因子、細胞外液性因子はWnt以外にあまり知られておらず、将来の小腸再生医療応用を考えるとこの意義は大きいと思われる。 さらに、発生分化過程におけるRegの役割を評価するためにまず正常マウスの胎児におけるRegの時間的発現パターンを解析したところ、Regの発現は小腸に絨毛構造ができ始める胎生15日頃から急激に上昇することがわかった。ノックアウトマウスの胎児ではこの時期に一致して正常マウスとの増殖の差が出始めることが示された。このように、Regは小腸において絨毛構造の形成に深く関与していることが示唆された。
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