Toll受容体(TLR)シグナルの"負のフィードバック調節機構"に関する検討を継続した。本年度は、TLRリガンドの再刺激によって誘導されるトレランス成立における負のフィードバック調節分子の関与について研究を進めた。負の調節因子として、IRAK-M(IL-1R-associated kinase-M)、A20(細胞質性ジンクフィンガータンパク質)、Tollip(Toll-interacting protein)を選定した。ヒト大腸上皮細胞株のHCT-15、HT-29をTLRのリガンドであるLPS、flagellinで刺激すると、有意なNF-kB活性とIL-8の産生が誘導されるが、同じリガンドによって再刺激をおこなうと、いずれの場合にもトレランスが成立した。トレランスに関わる負の調節因子の関与を明らかにする目的で、A20、Tollip、IRAK-Mに対するsiRNA発現ベクターを作製し、これらの遺伝子をあらかじめノックダウンした系を確立した。ノックダウンした細胞によってトレランスの誘導実験をおこなうと、IRAK-Mのノックダウンによってのみトレランス成立が解除されることが明らかとなった。以上のことから、TLRシグナルの寛容成立に関しては、IRAK-Mが重要な役割を果たすことが示唆された。
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