研究概要 |
1、複数の細胞株におけるHCV全長遺伝子複製系の樹立 Huh7細胞株を用いた、T7遺伝子の下流にC型肝炎ウイルス(HCV)の全長cDNAを持つプラスミドをトランスフェクションし、さらにT7遺伝子を発現するアデノウイルスベクターを感染させ比較的長期間HCV遺伝子を発現できるHCV遺伝子複製系を開発した。また、アデノウイルスベクターを用いないT7持続発現細胞株を用いた遺伝子複製系を確立し発表した(J Virol Methods 132:195-203,2006)。現在、Huh7細胞株以外に他の細胞株(HepG2など)においても同様な遺伝子複製系を樹立している。 2.新しいHCV遺伝子複製系を用いたHCV増殖と宿主細胞の相互干渉、相互作用についての解析 上記の実験系を用いてHCV増殖とPKRの相互作用について検討した。PKRをdown regulateした細胞株ではHCVがより強く増殖し、PKR発現プラスミドを用いたPKR強発現細胞ではHCV増殖が抑制された。このことからHCV増殖にPKRの発現は直接的に影響を与えることが証明された。今後PKRと同じくインターフェロン(IFN)によって誘導されるInterleukin-8 (IL-8)のHCV増殖に与える作用について究明していきたい 3.C型肝炎患者の末梢血リンパ球を用いた、IFN誘導蛋白の解析 IFN治療中のC型慢性肝炎患者の末梢血よりT細胞を単離後、RNAおよび蛋白を抽出した。IFN誘導蛋白でHCV増殖に影響を与えることが確認できたPKRのmRNA量をreal-time PCR法で検討した。その結果、IFN投与後3ヶ月でウイルスが陰性化するEVR(Early virological response)の症例では、IFN投与後8時間、12時間のPKR発現量が増加していた(p<0.05)。臨床的にもPKRの増加がHCV増殖を抑制することが確認できた。
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