研究概要 |
抗原提示細胞である樹状細胞(DC)は、免疫の調整を行っており、免疫応答と免疫寛容を誘導することができる。免疫応答を誘導するDCは、様々な研究が行われ、現在では癌の治療に用いられ、臨床応用されている。一方、免疫寛容を誘導する制御性DCは、自己免疫性疾患の治療への応用が期待されているが、制御性DCによる治療に関する報告はほとんどみられない。今回われわれは、制御性DCの免疫制御能について、原発性胆汁性肝硬変(PBC)のモデルマウスを用いて検討した。制御性DCは、マウス骨髄由来DCをIL-10、LPSと特異抗原存在下に培養して作製した。また、骨髄由来DCにIL-10、LPSとPBC特異抗原を加えて培養し、PBC特異的制御性DCを作製した。PBCモデルマウスは、免疫賦活因子である、Poly I:Cを週2回×4ヶ月間投与することにより作製した。Poly I:C単独投与群、Poly I:Cと制御性DC投与群、Poly I:CとPBC特異的制御性DC投与群の3群で実験を行った。Poly I:C単独投与群においては、門脈域を主体とする炎症細胞浸潤がみられ、胆管周囲の炎症細胞浸潤があり,PBC様の病変がみられた。また、血中に自己抗体が出現した。一方、制御性DC投与群とPBC特異抗原でパルスした制御性DC投与群においては、PBC様病変の改善がみられた。血中の自己抗体の出現率は、3群に差はみられなかった。今回の結果から、樹状細胞療法が免疫反応を制御し、PBCの新しい治療法になる可能性が示唆された。
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