研究概要 |
申請者らは樹状細胞(DC)の機能低下がB型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染に関与していることをHBVトランスジェニックマウス(HBV-tg)で明らかにした。HBs抗原をパルスしたDc(Dcワクチン)を正常およびHBV-tgに投与すると、HBs抗体が出現することを明らかにした。このDcワクチンをヒトへの臨床応用を行い、その安全性と一定の効果を確認している。本研究では、液性抗体産生におけるDCの役割や液性抗体産生を促進する機構を明らかにすることを目的としている。 1.マウスでの検討:我々の従来の研究は、脾臓のDCを用いて行ってきた。今回、肝DCの単離を行い、HBV-tgでのT細胞増殖補助能の低下、サイトカイン産生能の低下を報告した。また、in vitroでHBs抗原のパルスにより、DCの細胞表面マーカー(MHC class II,CD86)やサイトカイン産生を評価した。この抗原をパルスしたDCは、抗原特異的免疫応答が誘導できる。現在、液性免疫の検討として、DCのB細胞活性化因子(BAFF)の発現、産生について検討を行っている。また、この抗体産生にT細胞のヘルプが必要であるかについても解析中である。 2.ヒトでの検討:HBs抗原に加えHBc抗原のパルスによるDCの免疫応答をin vitroで解析し、抗原特異的免疫応答が誘導できていることを確認した。臨床応用としては、健常人でHBs抗原をパルスしたDCの投与により、HBs抗体の産生がみられることを報告した。引き続いて、B型慢性肝炎患者にDCワクチンの投与を行っている。現在までに副作用はみられていない。DC投与によるHBs抗体のsubclassの解析とBAFFの測定を行っている。
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