抗原特異的液性免疫の誘導における抗原提示細胞である樹状細胞(DC)の役割を明らかにするため、マウスの脾臓から分離したDCとB型肝炎の表面抗原であるHBs抗原を混合培養し、マウスHBs抗原パルス脾DCを作製した。マウスHBs抗原パルス脾DCは、非パルスDCと比較して炎症性サイトカインの産生量が多く、強い免疫原性を有することがわかった。さらに、マウスHBs抗原パルス脾DCは、HBs抗原特異的メモリーリンパ球を活性化することができた。マウスHBs抗原パルス脾DCをマウスに投与すると、HBs抗体だけではなく、HBs抗原特異的メモリーT細胞を誘導した。いくつかの例では、HBs抗原特異的メモリーT細胞の出現前にHBs抗体が検出された。このことは、抗原パルスDCによる抗体産生機構は、T細胞を介していない可能性が示唆するものであり、さらなる実験を行った。次に、前述の実験をヒトで行った。ヒト単核球由来DCを市販されているB型肝炎ワクチンと混合培養し、ヒトHBs抗原パルスDCを作製した。ヒトHBs抗原パルスDCを健常ボランティアに投与し、HBs抗体の産生を誘導することができた。また、B型肝炎ワクチン投与にて抗体産生のみられないワクチン不応者においても抗体産生を誘導することができた。また、ヒトHBs抗原パルスDCの培養上清からは多量のBAFFが検出され、抗原パルスDCは、BAFFを産生することがわかった。さらに、ヒトHBs抗原パルスDCを投与した健常人の末梢血中のBAFF濃度は、投与前より上昇していた。以上のことより、抗体産生機構には、T細胞によるB細胞の活性化経路に加えて、抗原提示細胞によるBAFF産生経路が存在することが考えられた。
|