研究課題
基盤研究(C)
本研究では外来株と推定されるB型肝炎ウイルスゲノタイプD(HBV/D)の四国北西部への侵入時期と拡散時期、その由来を明らかにするとともに、感染経路ならびに現在地理的にどこまで拡散しているかを明らかにし、拡散防止対策の基礎データを得ることを目的とした。HBV持続感染者509例、初感染B型急性肝炎44例を対象にHBVゲノタイプを測定した。更に、HBV/D感染例19例より採取された血清20検体からDNAを採取し、全塩基配列を決定し、分子進化学的手法を用いて変異速度および同地域への侵入時期・拡散時期を推定した。同地域のゲノタイプ別頻度はA-Dの順に1.7%、6.6%、77.4%、14.3%であった。分子系統樹では、20株はclusterを形成し、ロシアと北ヨーロッパからのHBVに類縁株がみられた。分子疫学解析により、侵入は約100年前、拡散開始は1940年台、急速な拡散は1970年台と算定された。系統樹の起点が約100年前であること、ロシア、北ヨーロッパ株に類似した配列であることと、当地域の歴史を重ねて考察すると、日露戦争に関連した人の移動がHBV/D侵入の要因と推定された。持続感染者に占めるHBV/Dの割合は、愛媛中予で10.9%、東予で0.8%、南予で0.8%であった。急性肝炎においてはHBV/Dは全B型急性肝炎の21.7%を占めた。感染経路はgenotypeにかかわらず、性感染が大半を占めた。以上より、北四国のHBV/Dは約100年前に侵入し、1970年台に急速に拡散したこと、その由来はロシアからであることが推察された。HBV/D感染の拡散は、愛媛県中部が主体で、現在のところ他地区では低頻度であったが、他地区での侵淫状況についても今後検討する必要がある。感染経路は性感染が主体であり、性感染を防止する対策が必要と判断された。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (8件)
Intervirology 50
ページ: 150-155
Hepatplogy Reseasrch 37
ページ: 255-262
Hepatology Research 37
Journal of Medical Virology 87
ページ: 44-52
肝臓 47
ページ: 518-523
Kanzo 47