研究課題/領域番号 |
17590654
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
西森 功 高知大学, 医学部附属病院, 講師 (30237747)
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研究分担者 |
竹内 保 高知大学, 医学部, 助教授 (50226990)
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キーワード | 炭酸脱水酵素 / 炭酸脱水酵素関連蛋白 / 大腸癌 / マイクロアレイ / 消化管間葉系腫瘍 / 肺癌 |
研究概要 |
1.発現ベクターに組み入れたcDNAの移入により、炭酸脱水酵素関連蛋白(carbonic anhydrase-related protein)XIを過剰に発現する消化管間葉系腫瘍細胞(GIST-T1-CA11)を作成した。昨年後の実験により、GIST-T1-CA11はwild type の細胞(GIST-T1)に比べ、細胞の増殖能と浸潤能の有意な増強を示すことが確認されている。GIST-T1およびGIST-T1-CA11からRNAを抽出し、各々Cy3およびCy5で標識後、2万個の遺伝子を載せたマイクロアレイにハイブリダイズし、各遺伝子の発現量を比較検討した。その結果、種々の遺伝子の発現が増強(最大はribonuclease T2の5.65倍)あるいは抑制(最小はhigh mobility group AT-hock 2の0.076倍)されていた。 2.上記1で得られた結果を、CA-RP VIII強制発現大腸癌細胞(LoVo-CA8)とwild typeの細胞(LoVo)を用いて昨年度にマイクロアレイによりスクリーニングした結果と照合した結果、共通して変化した遺伝子として、fibro-blast growth factor receptor 2(FGFR2) (CA-RP VIIIにより0.27倍に、CA-RP XIにより0.25倍に発現量が低下)が認められた。FGFR2は正常大腸粘膜上皮の表層細胞(分裂を終えた細胞)や高分化型大腸癌病巣の中心部での発現が報告されている(Oncology Research 13:247:2005)。すなわち、細胞の増殖より、むしろ分化に関連していると考えられる。FGFR2とは対照的に、CA-RP VIIIあるいはXIは大腸癌や消化管間葉系腫瘍の辺縁で発現が見られる。本実験の結果より、CA-RPは細胞の分化には関連しておらず、細胞の増殖により関連が深いことが示唆された。 3.これまで消化器癌細胞においてCA-RPが増殖に関連していることを検討してきたが、このCA-RPの機能が組織型を問わず普遍的な現象であることを確認するため、培養肺癌細胞株(PC9)への遺伝子導入によりCA-RP VIIIの高発現細胞株を作製した。pcI-neoベクターを用いて以前に作成した細胞株に加え(pCI-CA8-PC9)、さらに強力な蛋白発現能を持つpEF1-Hisベクターを用いてCA-RP VIII強発現細胞株を作成した(pEF-CA8-PC9)。pEF-CA8-PC9におけるCA-RP VIIIの mRNA発現量はコントロールの10.5倍、pCI-CA8-PC9の5.5倍であった。Chemotaxis chamberを用いて細胞の浸潤能を検討した結果、pCI-CA8-PC9はコントロールの細胞に比し有意な浸潤能の増強を認め、さらにpEF-CA8-PC9はpCI-CA8-PC9に比べ有意な浸潤能の増強を認めた。 4.以上の研究結果により、CA-RPが消化器癌のみならず他の癌腫においても増殖および浸潤能を増強することが示された。
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