1)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)患者類似の病態を呈するNASH動物モデルの確立と病態解析:これまで、Gold-thioglucose(GTG)投与による過食、肥満を来たす動物モデルがNASH特有の病態を示すことを確認していたが、本年度はその動物に高脂肪食を与えることで、より高度の肥満・脂肪肝そしてインスリン抵抗性の悪化が起こることが分かり、人間においても高脂肪食の影響が肥満、脂肪肝の発生には非常に重要であると思われた。さらに、その病態を血液学的、生理学的、分子生物学的手法を使って解析するとともに、動物用CTを使った経時的な検討も行うことで肥満・脂肪肝、そしてNASHへの進展メカニズムに繋がる病因が徐々に明らかになってきた。さらに、GTG投与半年後より肝での維化が著明となってくるが、その病態に対しTGF-β、angiotensin II、活性酸素などの関与が重要であることが明らかになってきた。さらに、高度の過食や高脂肪食によりインスリン抵抗性や肝での脂肪酸合成能の亢進が行われるが、その分子生物学的メカニズムも徐々に判明している。来年度はこれらの実験結果をさらに分析していく予定である。 2)NASHに対する有効な薬剤の検索、検討:現在まで、NASHに対する治療方法は減量以外には有効でないのが実情である。NASHに対する薬剤の検討が難しかった理由の一つに最適なNASHモデル動物がいないことである。NASH患者に類似の病態を示す動物モデルの存在なくしては薬剤の検討、開発は成しえない。今回我々は最適なNASH動物モデルの開発をするとともに、現在、人間に投与可能な薬剤の中でNASHの病態改善に有効である可能性のある薬剤の検討を行い、そのデータを得ることができた。その一つがアンギオテンシンレセプター拮抗薬(ARB)である。ARBは抗圧剤として広く使用されているが、NASH肝の線維化進展抑制効果があることが明らかとなった。現在そのメカニズムに関するデータを蓄積しており、来年度中には発表が可能であると考えている。
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