研究課題/領域番号 |
17590659
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
大津留 晶 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教授 (00233198)
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研究分担者 |
永田 康浩 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (80336164)
濱崎 圭輔 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (50333521)
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キーワード | 空腹感 / 食欲 / 成長ホルモン(GH) / IGF-I / 体重減少 |
研究概要 |
胃癌の診断や手術の進歩に伴い、胃切除術後長期間生存が得られるようになった、しかし一方で、胃切除にともなう様々な機能障害が、患者のQOLにとって重要な問題となってきている。そこで胃切除術後にグレリンが非生理的に欠乏した患者さんにおいて、グレリン補充療法の治療的意義があるかどうか明らかにする目的で、臨床研究(倫理委員会承認番号16091054)を企画した。 術前の血中グレリンレベルを100%とすると、幽門側胃切除では78%に低下し、胃全摘術では32%まで低下していた。また摂食量も術後4週時点で、幽門側胃切除術が術前の80%であるのに比べ、胃全摘術は50%程度に低下し、それはグレリンの低下レベルと一致していた。さらに術後6ヶ月以上経過した安定期で、術前BMIと比較すると、グレリンの血中レベルと%BMI減少率に負の相関が見られた(r=0.734,p<0.001)。またグレリンレベルと血中IGF-1に相関が見られた。 グレリン補充療法の結果は、胃切除患者においても健常人と比較すると著明でないが、食欲の増進効果が認められた。またグレリン投与により、GH、ACTHは著明に反応していることが判った。術後体重は、グレリン投与前まで術前より次第に減少してきていたが、グレリン投与後、体重の低下はストップした。さらに一般に術後低下する除脂肪体重が増加していた。一方、胃切除後では健常人に比し、グレリン誘発性の空腹感が少ないことが観察された。そこで空腹時のグレリンの日内変動を調査した。健常人では摂食とは非依存的にグレリンの日内変動が認められ、それにより空腹感と食欲が誘発された。またそのグレリンの日内変動と一致してGHのサージが認められた。胃切除患者ではそれらが消失していることが認められた。胃全摘出術後に認められる体重減少、食欲不振、ダンピング症候群、貧血、骨粗鬆症、消化管運動障害などの様々な機能障害の病態にグレリン欠乏が関与している可能性があり、それらに対しグレリンによる治療効果が期待できることが示唆された。
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