研究課題
基盤研究(C)
培養細胞からのペプチドミクスを活用したペプチドの網羅的解析を行えば、前駆体蛋白由来のペプチドフラグメントが多数同定でき、その前駆体蛋白の遺伝情報や新たに同定したペプチドフラグメントのアミノ酸配列から生理活性を有するペプチドが推定可能であると考えられた。実際にこの方法を消化管由来培養細胞株に適用した結果、約300個のペプチドフラグメントが同定された。その中から重要と推定されるペプチドを合成し、標的細胞の生物活性を評価した。腫瘍細胞株、オーファン受容体発現系の細胞株やラット消化管から分離・培養した初代細胞、および96サンプルを一度に測定できる現有の最新Ca^<2+>イメージング装置(IMACS細胞内イオン動態画像解析システム)を用いて解析した結果、細胞内カルシウム上昇活性を有する2つの生理活性ペプチドを同定した。同定したペプチドのアミノ酸配列に基づき、ラット組織よりペプチドをコードするcDNA配列を決定し、ペプチド前駆体構造を明らかにした。その結果、growth factorにより強力に誘導される既知遺伝子のペプチド断片であることを見いだした(特許申請中である)。消化管各部位のmRNA発現量について定量PCRを行い、消化管全体に発現し、絶食で変動することを認めた。家兎への免疫で新規ペプチド特異的抗体を作製して高感度RIA系を開発した。この定量系を用いて新規生理活性ペプチドの消化管内ペプチド濃度を検討した結果、胃から大腸にかけて免疫活性を認め、消化管下部に行くに従いその組織含量が増加することを見いだした。特に胃組織での陽性細胞の局在を検討し、胃幽門部に強い新規ペプチド陽性細胞を認めた。ガストリンとの二重染色で、新規ペプチドがガストリンと共存することを認め、胃酸分泌への関与が示唆された。また、下部消化管ではアウエルバッハ神経叢に強い染色性を認めた。他の約300のペプチドフラグメントに関して、データベース情報から消化管の発生、発達や機能に重要と推定されるフラグメントをin silicoで検索中である。
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