【目的】 胃癌の10〜15%が家族性胃癌とされているが、その原因遺伝子は依然不明である。我々はこれまで、家族性胃癌患者においてフェリチンH鎖遺伝子のiron responsive element(IRE)領域に点突然変異(A49U)が認められる家系を複数報告した。本研究では、変異H-フェリチン遺伝子のトランスジェニックマウスを作成し、この遺伝子が家族性胃癌の原因遺伝子であるかどうかを検討した。 【方法と結果】 (1)ノックインベクターの作製 マウスgenomic libraryよりPCR法によりH-フェリチン遺伝子を増幅して(3.4kb HindIII-BamHI fragment)、vectorに挿入した。その後、同遺伝子のIron responsive element(IRE)-loopのsecondbaseにA/U変異を導入し、シークエンスにより変異を確認した。このA/U変異を含むHindIII-BamHI fragment、splice acceptorであるen-2、encephalomyocarditis virus(EMCV)のinternal ribosome-entry site(IRES)、β-galactosidase(β-gal)、neo配列を有するβ-geo及びSV40のpolyA signalをligationしてノックイングベクターを作製した。 (2)マウスES細胞への遺伝子導入 マウスのES細胞を培養し、エレクトロポレーション法によりノックイングベクターを導入(ノックイン)し、G418耐性の68クローンを獲得した。これらのクローンよりDNAを抽出し、PCR-RFLP法により15個のノックイン細胞を獲得し、さらにシークエンス解析により9個のクローンを確認した。現在これらのクローンを用いてキメラマウスを作成中である。 【結論】 マウスH-フェリチン遺伝子のノックインベクターを作製し、ES細胞に導入した。現在、得られたクローンを用いてキメラマウスの作成を行っている。
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