1.H18年度の研究までの基礎的検討で明らかとなったACE阻害薬(ACE-I)とビタミンK(VK)併用による肝発癌抑制効果について臨床的検討を行った。その結果、ACE-IとVK併用療法の一次発癌予防治療法としての可能性を確認し、World J Gastroenterol 2007;13:3259に報告した。 さらに、多数症例(計50例)での検討を行い、RFA後の肝癌再発を非投与群に比べて有意に抑制し得ることを見いだした。この臨床効果は血管新生因子VEGFの低下およびlatent cancer cellのマーカーと考えられているAFP-L3の抑制とほぼ平行して推移していたことから血管新生阻害による臨床効果の発現が初めて示唆された。また各薬剤単独投与ではこれらの臨床学的効果は認められないことを確認し、作用機序の異なった血管新生阻害剤を組み合わせることで初めて効果を認めることについて臨床的に証明した。 2.ACE-Iに肝癌に対して広く用いられている抗癌剤である5-FUを併用投与することにより、肝癌発育および肝発癌が血管新生阻害を伴って有意に抑制されることを見いだし、Oncol Rep2007;17:441に報告した。 3.肝線維化過程において高分子adiponectinが特異的受容体であるT-cadherinと協調して重要な役割を果たしていることを見いだし、Int J Mol Med 2007;20:725に報告した。 これらの本研究により血管新生制御に基づく肝癌・肝線維化医療の可能性について基礎的検討に基づいたtranslational researchの可能性が高まったと考える。
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