研究概要 |
ADAMTS13は主に肝臓で産生されるメタロプロテアーゼであり、超高分子von Willebrand factor (VWF)マルチマー(UL-VWFM)を分解する。本酵素が低下した病態では、 UL-VWFMと血小板が結合し、血小板血栓形成傾向となり、諸臓器の微小循環障害が惹起される。 我々は、まず本酵素の肝での産生部位を明らかにするためにADAMTS13のdisintegrin domainを認識するA10抗体と,7番前と8番目のthrombospondinドメインを認識するC7抗体の2種類の抗体を作成し免疫染色を行った。その結果、A10抗体、C7抗体共、細長い樹枝上の突起を有する肝類洞壁細胞が染色された。次に、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、ADAMTS13と活性化星細胞のマーカーであるα-smooth muscle actinとの2重染色を行ったところ、両者は完全に一致した。In situ hybridaizationでも、肝類洞壁細胞に同様に樹枝状のmRNAのシグナルが得られ、本酵素が肝星細胞で産生されることを内外通じ初めて明らかにした(Blood,2005)。 次いで、各種肝疾患における本酵素の動態解析を試みた。アルコール性肝炎、特に多機器不全を合併する重症アルコール性肝炎のADAMTS13活性が血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)に匹敵する程度にまで著減しており、本酵素活性の低下がアルコール性肝炎の発症、進展に関与する可能性を指摘した(Alcohol Clin Exp Res,2005,Alcohol clin Exp Res, in press)。現在、急性肝炎、劇症肝炎のADAMTS13活性の動態を検討中である。また、TTPを合併し、血漿交換により救命し得た肝硬変例において、ADAMTS13活性の著減と本酵素に対するinhibitorを検出し、それがIgGタイプであることを国内外通じ初めて報告し得た(J Hepatol,2005)。さらに、肝硬変において血漿ADAMTS13活性は肝の重症度が増すにつれて低下し、肝腎症候群および肝性脳症合併例で著減すること、ADAMTS13活性高度低下群では本酵素のinhibitorが存在し、UL-VWFMが検出されることを発表し、現在論文投稿中である。
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