研究概要 |
近年になり、血液細胞にのみ分化すると考えられてきた骨髄細胞が、血管内皮、骨格筋、心筋、神経、肝臓といった様々な細胞に分化していることを示唆する知見が相次いで報告されている。我々も東京医科歯科大学との共同研究で、男性ドナーより骨髄の提供を受けた女性患者の内視鏡検査時に得られた生検検体におけるY染色体の分布をFISH法により検討することで、造血幹細胞が上皮の再生に関わることを見出し報告した(Nat Med. 8:1011-7,2002)。今回の研究はそれに続くもので、骨髄由来の染色体が消化管の上皮細胞中に出現する現象が、純粋な分化による(transdifferentiation)ものなのか細胞融合(cell fusion)によるものなのかを明らかにする、というのが目的である。 具体的には、慶應義塾大学病院においてB型の男性をドナーとし骨髄移植を施行されたA型の女性症例よりGVHD等の診断目的にて採取された胃粘膜生検検体の一部を用い、A抗原をレシピエントの個体識別マーカー、Y染色体をドナーの個体識別マーカーとし、A抗原とY染色体の二重染色を行うこととした。至適プロトコールを検討の後、二重染色を行ったところ、A抗原とY染色体を併せ持つ胃上皮細胞の存在が確認され、骨髄由来の染色体が消化管の上皮細胞中に出現する現象はcell fusionを介するということが示唆された。 現在、結果の再現性を確認しつつ、投稿準備を進めているところである。
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