研究課題
グレリンは、GH分泌や摂食を亢進させるペプチドで、胃運動や酸分泌にも促進的に作用するが、その主たる産生部位は胃底腺の壁細胞近傍に位置するA-like細胞である。このため、グレリン産生細胞と酸分泌細胞である壁細胞間には密接な関連が推測される。壁細胞表面には、ヒスタミン2型受容体(H_2R)及びムスカリン3型受容体(M_3R)が存在し、ヒスタミンあるいはアセチルコリンの刺激を受け、酸分泌を調節している。本研究では、このH_2R或いはM_3Rの欠損マウスを用い、壁細胞を介在する各シグナルを遮断し酸分泌能を修飾した状態でのグレリン動態について検討した。H_2Rノックアウトマウス(H_2RKO)の解析63週齢の雄性H2RKOとその野生型マウスを用いた。血漿および胃内のグレリン濃度はRIAで定量した。抗グレリン抗体を用いた免疫組織化学を行い、胃粘膜内グレリン陽性細胞数を検討した。プレプログレリンのmRNAは定量的RT-PCR法で検討した。免疫電顕組織化学にてA-like細胞中のグレリンを金コロイド標識し、小胞内グレリン陽性金コロイド密度を算出した。H_2RKOで、摂食量は有意に増加し、血漿グレリン値の増加と一致した。胃内総グレリン、活性型グレリン値は、H_2RKOで有意に低下する一方、胃粘膜内グレリン陽性細胞数は有意差を認めなかったが、A-like細胞内グレリン陽性金コロイド密度は有意に低下した。一方で、胃内プレプログレリンmRNA発現は有意に増加した。以上より、H_2Rの欠損では、ヒスタミン刺激の遮断による酸分泌低下が、グレリンの産生・分泌回転を亢進し、血漿グレリンの増加、A-like細胞内貯蔵量の減少、mRNA発現の亢進が招来されたものと考えられた。M_3Rノックアウトマウス(M_3RKO)の解析25週齢の雄性M_3RKOとその野生型マウスを用いた。体重は、M_3RKOでWTに比し著明に低下したが、血漿総グレリン値、活性型グレリン値は両群間で有意差を認めなかった。一方、胃粘膜内グレリン陽性細胞数は両群間で有意差を認めなかったが、胃内総グレリン値、さらには胃内プレプログレリンmRNA発現量は、M_3RKO群で著明に増加していた。以上より、M_3Rの欠損では、A-like細胞よりのグレリン分泌が障害され、細胞内でのグレリン産生亢進と蓄積が生じているものと推察され、グレリン分泌にアセチルコリンを介したシグナルが重要であることが示唆された。
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