Crohn病の病態において単球マクロファージ系細胞の活性化異常が鍵となることが明らかとされ、臨床的に実用化されている、あるいは開発途上にあるCrohn病治療薬の多くが活性化マクロファージを標的としたものであるが、非特異的なマクロファージ活性化の抑制のために、その効果の持続性や副作用があることが問題となっている。Crohn病における単球マクロファージ系細胞の活性化異常を規定している遺伝子異常あるいは遺伝子発現異常を解明し、それにもとづくCrohn病特異的な単球マクロファージ系細胞の活性化経路を是正する治療法の開発が急務とされている。本研究は(1)Crohn病に特異的な単球マクロファージ系細胞の活性化(NF-κB活性化)経路を追究し、(2)(1)で見いだした特異的なNF-κB活性化経路を標的とした分子創薬を行う、(3)プロトタイプとして変異NOD2を有する細胞の移入によるヒト型Crohn病モデルマウスを確立することを目的とした。 本年度はTh1型の腸炎を自然発症する、抑制性サイトカインIL-10の遺伝子欠損マウスを用い、マクロファージ(Mφ)による腸内細菌認識と腸炎誘導メカニズムについて検討を行った.正常マウスの腸管MφはIL-10高産生の抑制性M□であり、腸内細菌への過剰な免疫反応を制御していることが明らかになった。一方、炎症性腸疾患モデルであるIL-10ノックアウトマウスでは内因性IL-10の欠損のため腸管Mφが異常な分化を遂げ、腸内細菌に対しIL-12過剰産生することが明らかになった。このように本来抑制性である腸管Mφの分化異常が腸内細菌に対する過剰な免疫応答を引き起こすと考えられた。
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