研究課題
今年度の検討では胆汁酸がEGF受容体(EGFR)-ERK1/2経路を活性化する機序を検討した。【結果】(1)胆汁酸(デオキシコール酸、DC)はAGSでPGE2産生およびCOX2発現を増加させた。DCは添加5分後をピークにERK1/2を活性化し、ERK1/2選択的阻害剤PD98059はDCによるCOX2発現を抑制した。(2)DCは添加5分後をピークにEGFR活性化を促進した。またEGFRのチロシンキナーゼ特異的阻害剤PD168393はDCによるERK1/2活性化とCOX-2発現を抑制した。(3)HB-EGF抗体あるいはHB-EGF特異的阻害剤であるCRM197を培養上清に添加後にDCで刺激すると、EGFRとERK1/2の活性化は抑制された。RT-PCR法でHB-EGFのmRNA発現がAGSで確認された。DCはHB-EGFの作用を介してリガンド依存性にEGFRをtransactivationすると考えられた。(4)様々なG蛋白共役受容体(GPCR)がEGFRをtransactivationすることが報告されている。最近、GPCR型胆汁酸受容体M-BAR(membrane-type bile acid receptorの存在が報告された。M-BARのsiRNAを導入するとDCによるEGFRおよびERK1/2の活性化は抑制された。(5)metalloproteinase阻害剤であるBiPSはDCによるEGFR活性化を抑制した。AGS にADAM17のsiRNAを導入するとDCによるEGFRおよびERK1/2の活性化を抑制した。【結論】胆汁酸はM-BARと結合しADAMに作用してHB-EGFを遊離させEGFR・ERK1/2経路を活性化しCOX2発現を誘導すると考えられた。M-BARは消化管癌の発癌予防のターゲットと成り得る。
すべて 2005
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Journal of Gastrotenterology 40
ページ: 690-697
Biochem Biophys Res Commun 340
ページ: 742-750