研究概要 |
1.肝内胆汁うっ滞症例の集積 これまでに19症例を集積した。研究協力施設の増加により症例は着実に増加しつつある。平成19年度に最低30症例を集積し遺伝子解析を開始したい。 2.胆汁うっ滞における胆汁酸トランスポーター糖鎖修飾の意義 肝硬変症では糖鎖修飾の異常によって糖蛋白の機能障害が生じている可能性が示唆されている。糖蛋白における糖鎖修飾は蛋白のfolding、立体構造の維持、proteolysisからの防御、intracellular traffickingなど細胞内の重要な機能に関与している。肝細胞における主要な胆汁酸トランスポーターであるBsepには想定されるN-linked glycosylation siteがfirst extracellular loopに4ヶ所存在する(Asn^<109>,Asn^<116>,Asn^<122>,Asn^<125>)が、糖鎖修飾の生理的意義は不明である。本研究では想定されるglycosylation siteを欠失した種々のmutantを作製し、平成17年度に開発したMDCKII細胞を用いた実験系を用いて糖鎖修飾の意義について検討した。その結果、4つの想定されるN-linked glycosylation siteはすべて糖鎖修飾を受けており、それ以外には糖鎖修飾部位はないことが明らかになった。また、2ヶ所以上の糖鎖修飾を受けているBsepは野生型Bsepの60%以上の活性を有していたが、糖鎖修飾が0または1つのBsepの活性は10%以下であった。細胞内半減期の解析から活性の低下は糖鎖が欠損することによりfoldingがうまくいかずproteasomeでdegradationされることが原因であることが明らかとなった。以上のことからBsep蛋白の安定な発現には4つのうち少なくとも2つ以上の糖鎖修飾が必要であり、さらに肝硬変症における胆汁うっ滞に糖鎖修飾異常が関与している可能性が示唆された。
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