研究概要 |
現在、最も注目されている一つに活性酸素種・フリーラジカルと生体への酸化ストレスがある。細胞内でのそれらはセカンドメッセンジャーとして種々の遺伝子発現に影響すると考えられる。今回我々は、酸化ストレスが慢性肝障害から肝発癌に至る一連の病態にどう関与しているかを網羅的遺伝子発現解析(GeneChip【○!R】)により検討することを目的とした。病因にかかわらず、持続的な酸化ストレス状態は肝発癌に深く関与している。ヒト対象では病因や背景が多様であり、必ずしも酸化ストレス状態の直接的関連性を反映しているとは限らない。そこで多因子の関与を除く為にLECラットを用い、酸化ストレス状態における連鎖的遺伝子発現を把握、腫瘍原性の機序解明に寄与できればと考えた。 LECラットは約1年令前後で肝腫瘍を自然発症する。肝腫瘍部・非腫瘍部の網羅的遺伝子発現解析を行った。31,099遺伝子のうち腫瘍部に高発現している114遺伝子は、cell adhesion、angiogenesisを含むmolphogenesis、cell cycle/cell growth、腫瘍発育に必要と考えられるmetabolism/signal transduction等の遺伝子群であった。逆に低発現遺伝子はanti-angiogenesis/anti-apoptosis、活性酸素種を消去・還元する酵素・代謝、肝再生等に関連する遺伝子群だった(詳細は来年度web上で公開)。現在、各々の遺伝子に関しgene ontologyやpathway mappingも含めた詳細な検討を行っている。このように同定された遺伝子群から病態を考察することは、酸化ストレスによる慢性肝障害・肝発癌の治療や予防に新たなアプローチ(遺伝子治療や抗酸化剤療法等)が期待できる。現在、新規抗酸化剤で良好な結果が得られたため、特許を申請中である。
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