研究概要 |
我々は、臨床応用を目指した肝疾患のSNP解析をおこなっている。昨年度、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と単純性脂肪肝との間で、TNF-α promoter region-1031,-863のSNPが有意に異なっていたことを報告した。今回はその臨床的意義・機序を調べた。まず、これらのSNPがTNF-αの産生に影響を及ぼしている仮説をたて、TNF-αの産生の目安として末梢血soluble TNF receptor-2の測定、インスリン抵抗性との関係を調べた。Soluble TNF receptor-2に関しては、NASHでTNF promoter region-1031Cの保有者でTNF promoter region-1031Aの保有者と比較して、有意に上昇していた。またインスリン抵抗性の指標となるHOMA-IRも有意に上昇していた。また健常者の単核球を採取し、Con-Aで刺激し、TNF promoter region-1031Cの保有者と-1031Aの保有者で培養上清中のTNF-αの産生を比較した。その結果TNF promoter region-1031Cの保有者で有意にTNF-αの産生が高かった。以上より、TNF遺伝子多型が、TNF-αの産生に影響を及ぼし、インスリン抵抗性や肝臓の炎症に及ぼし、NASHの発症・進行に寄与しているものと推測された。またadiponectinに関しては、SNPと血中濃度の間には有意な関係はなかったが、adiponectin Exon2+45 G/Gの保有者でNASHの線維化進行群が有意に多く、インスリン抵抗性HOMA-IRも高値であった。Adionectinは内臓脂肪量に反比例するため、単純な末梢血測定とSNPの間に相関がでなかったものと推測され、今後BMIや腹囲を揃えた人での検討、および培養脂肪細胞への遺伝子導入実験により、そのSNPの臨床的意義・機序を明らかにしてゆきたいと考えている。
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