研究概要 |
我々は、臨床応用を目指した肝疾患のSNP(Single nucleotide polymorphism)解析をおこなった。特に、(1)Nashと単純性脂肪肝と鑑別・進行に寄与するSNP、(2)肝炎劇症化に寄与するSNP、(3)C型肝炎の治療効果に寄与するSNPを中心に解析を進めた。その結果、(1)NASHと単純性脂肪肝の間に、TNF-α promoter region-1031,-863のSNPが有意に異なっていることを明かにした。その機序として、SNPとSoluble TNF receptor-2とHOMA-IRの関係を調べ、有意にSNPのgenotypeに影響を受けることを明かにした。従って、我々はNASHと単純性脂肪肝と病態の違いに、TNFの遺伝子多型がTNF-αの産生を介して、インスリン抵抗性や肝臓の炎症に及ぼしている仮説を立てさらに検証を進める予定である。またadiponectinに関しては、adiponectin Exon2+45 G/Gの保有者で肝臓の線維化の進行とインスリン抵抗性との間に有意な関係を認めた。今後のこのSNPの機序に関しては細胞への遺伝子導入実験等を通じて研究を進める予定である。(2)劇症肝炎に関しては、炎症性サイトカイン(TNF-α,β)、および抑制性サイトカイン(IL-10)、肝再生因子としてHepatocyte Growth Factor(HGF)のSNPに関して検討した。その結果、劇症肝炎で、TNF-βB2/B2およびL-10promoter region(ATA/ATA)のhaplotypeを持つ群の割合が有意に多かった。(3)C型肝炎のIFN+Ribavirinの治療効果に関しては、TNF-β遺伝子多型とMxA遺伝子の多型に違いが認められた。以上の結果が得られたが、今後症例を増やすともに、Prospective studyを組んでSNPの臨床的意義に関して検討してゆく予定である。
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