研究概要 |
1.マウス胚様体のin vivoにおける小腸組織への分化誘導 マウスES細胞由来胚様体を0.1%DMSO存在下に無血清培地で2週間培養し、腸管様構造体を誘導した。この胚様体にHVJエンベロープを用いてCDX-1またはCDX-2発現ベクター(CDX-1 pcDNA3.1,CDX-2 pcDNA3.1)を導入した後、アガロースゲル内に包埋し、ヌードマウス(BALB/C)の被膜下に移植した。移植4週間後に腎臓を摘出し、固定後、光学顕微鏡用および電子顕微鏡用の切片標本を作成し、移植した胚様体を顕微鏡下に観察した。その結果、CDXを発現させた胚様体と、コントロール胚様体との間に、小腸上皮組織の形成程度に明らかな差が認められなかった。その後の検討にて、HVJエンベロープによる胚様体への遺伝子導入効率が5%以下と低く、発現持続時間も約5日と短いことが明らかとなった。このため現在、レンチウイルスシステムを用いて、テトラサイクリンによるCDX発現制御が可能なES細胞株の樹立を検討している。今後このES細胞株を用いて同様の実験を行う予定である。 2.大腸上皮細胞株を用いた小腸上皮細胞分化転換法の検討 CDX遺伝子導入により大腸上皮細胞から小腸上皮細胞へ分化転換が可能であるか検討するために、大腸上皮細胞株(HT-29 cell)に、ネオマイシン耐性遺伝子を含むCDX-1またはCDX-2発現ベクターの遺伝子導入を行い、安定発現株の作製を行った。現在G418によるセレクションを行い、計20個の安定発現株を獲得している。今後これらの細胞株からCDX発現の高い株を選択し、実験に使用する予定である。また小腸上皮分化の適切な評価方法を小腸上皮細胞株であるIEC-18細胞を用いて検討を行った。その結果、ウエスタンブロット解析によるvillin, MUC2,ファイブロネクチンのタンパク発現は、HT-29細胞ではほとんど発現が認められず、一方IEC-18細胞では高い発現がみとめられた。この結果から、これらのタンパク発現は小腸上皮分化を示すよい指標になることが明らかになった。
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