研究概要 |
1.大腸上皮組織を用いた小腸上皮細胞分化転換法の検討 レンチウイルスベクターを用いてCDX2を安定発現した大腸上皮細胞株(HT29 cell)を作成した。この細胞株と、empty vectorを導入したMock細胞における小腸特異的分子のmRNA発現およびタンパク発現を比較検討した。その結果、CDX2発現HT29細胞では、IAP,SI,hephaestin,cadherin17などの発現が有意に高く、小腸上皮細胞の形質を獲得していることを明らかにした。 2.マウス胚様体のin vivoにおける小腸組織への分化誘導 レンチウイルスベクターを用いてテトラサイクリン依存性にCDX2を発現調節可能なマウスES細胞株の作成を試みたが、長期培養によりCDX2の発現低下が起こるといった問題がおこり、優良な安定発現細胞株を得ることができなかった。そこで、tet operator下流にloxP配列を有するES細胞を用いて、この細胞にCre/loxPシステムを用いてCDX2を導入し、目的の細胞株の作成を行っている。このES細胞株から胚様体を形成後、腸管様構造を誘導し、小腸組織の分化能を検討する予定である。 3.大腸上皮特異的にCDX2を発現するマウスの作成 マウス大腸組織にバルーンカテーテルを用いてCDX2発現レンチウイルスを感染させ、大腸上皮組織にCDX2を発現させる予備検討を開始。CDX2発現部位に絨毛様異型上皮が誘導されることを確認した。 これらの結果から大腸上皮細胞にCDX2を発現させることにより、小腸上皮細胞へ分化転換できる可能性が示唆された。本研究成果は、小腸不全に対する新しい治療戦略を開拓する上で重要な意義を有すると思われる。
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