研究概要 |
今回は、IgA産生と粘膜上皮細胞の維持に関与することで、粘膜防御に重要な役割を果たしているとされている、γδT細胞に着目した。具体的には、H.pylori感染性胃炎においてγδT細胞の遊走を制御している粘膜局所のcytokineに焦点をあてた。すなわち、粘膜局所のIL-1β,IL-7に加え、MCP-1がγδT細胞の遊走に重要な役割を果たしていることを明らかにした。そしてさらには、H.pylori感染刺激によって、γδT細胞上のMCP-1のレセプターであるCCR2の発現が増加することを明らかにした。そしてH.pyloriの除菌療法により胃粘膜中のγδT細胞のphenotypeであるVδ1 T細胞が有意に減少し、CCR2の発現量も有意に減少することをつきとめた。 また一方で、消化管上皮細胞におけるprostaglandinE2の役割を検討するために、腸上皮化生の進展に重要な役割を果たしているとされているCdx2の発現に及ぼすprostaglandinE2の影響を解析するため、選択的COX-2 inhibitorを用いて腸上皮化生の進展への影響を検討した。具体的には、H.nylori感染性胃癌モデルとして確立している、Mongolian gerbilにH.pyloriを感染させた群と選択的COX-2阻害剤であるcelecoxibを投与した群を作成し、胃癌がcelecoxib投与群で有意に抑制されることを見出した。そのうえで、両群において腸上皮化生の発現に極めて重要な役割を果たしている、homoobox geneの一つである、Cdx2の発現レベルを比較検討し、celecoxibがCdx2の発現を有意に抑制していることを確認した。これらの事実により、消化管上皮の分化にはprostaglandinE2がCdx2の発現を介して一部重要な役割を果たしていることが推察された。
|