研究課題/領域番号 |
17590687
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
麻生 定光 日本医科大学, 老人病研究所, 助教授 (70167914)
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研究分担者 |
大澤 郁朗 日本医科大学, 老人病研究所, 講師 (30343586)
森 隆 埼玉医科大学, 医学部, 助教授 (60239605)
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キーワード | アポトーシス / ネクローシス / Ptortein transduction domain / 肝臓 / ミトコンドリア / Bcl-x / 薬物性急性肝炎 / 四塩化炭素 |
研究概要 |
本研究の目的は薬剤によって引き起こされる肝組織変性を抑制するPTD-FNKを治療に適用し、薬物やアルコールによる急性および慢性肝炎の病態を改善することである。 我々はBcL-xL蛋白の3次構造を基に3個のアミノ酸残基を同種のアミノ酸残基に置換することで、イオンチャンネル活性に関与していると考えられている領域を安定化している3本の水素結合を破壊した。こうして作製されたFNK蛋白は細胞死抑制活性が増強されており、種々の細胞死誘導刺激に対しBcl-xLより強力に細胞死を抑制した(J.Biol.Chem.(2000))。HIVのTat蛋白は細胞膜を自由に通過できる蛋白質導入領域(PTD)を持っている。このPTDをFNKのN末端に融合させたPTD-FNKを培地に添加すると培養細胞に取り込まれてミトコンドリアに移行した。マウスの腹腔に投与するとPTD-FNKは肝臓、消化管、脾臓、脳の各組織の細胞に取り込まれた。さらに、PTD-FNK腹腔内投与でスナネズミ前脳虚血モデルの海馬CA1領域の遅発性神経細胞死を抑制した(Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2002))。 本研究課題の一年目である今年度は、培地に添加されたPTD-FNKは細胞内に取り込まれてミトコンドリアの機能を維持し、培養細胞HepG2の四塩化炭素やTNFαに対する耐性を増強すること、PTD-FNKをマウスに腹腔内投与することで四塩化炭素による肝組織変性(帯状壊死)を抑制し、その病態を著しく軽減することを論文に発表した。さらに、PTD-FNKは薬物による腎臓、腸管の障害も軽減する結果を得た。現在、実験動物の薬物による肝炎モデルを用いてPTD-FNKの肝障害抑制・軽減効果を有効に発揮する投与方法について組織化学的および生化学的に検討している。
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