研究課題/領域番号 |
17590692
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
川村 希代子 千葉県がんセンター(研究所), 病理研究部, 主席研究員 (80260248)
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研究分担者 |
田川 雅敏 千葉県がんセンター(研究所), 病理研究部, 部長 (20171572)
山口 武人 千葉大学, 医学研究院・腫瘍内科学, 講師 (00241969)
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キーワード | アデノウイルス / CAR / CD45 / 膵がん / ウイルス増殖 / NF-1 |
研究概要 |
従来より遺伝子導入用ベクターとして用いられているアデノウイルスはタイプ5型であり、その受容体は主にコクサキーアデノウイルス受容体(CAR)である。しかし、膵がんをはじめとする消化器がんにおいては、CAR分子の発現が低下し、そのためタイプ5型による遺伝子導入効率は低下している。そこで、腫瘍において高い発現をみるCD46分子を受容体とするタイプ35型ウイルスの受容体結合部位であるファイバー領域のみを、タイプ5型の当該領域で置換したベクター系を構築すれば、基本的なウイルスの構造はヒトにとって安全なタイプ5型であって、かつCAR低発現の腫瘍に対しても感染効率が向上するはずである。タイプ5型ウイルスのCAR分子結合領域はaccession number M73260において31042-32787に相当しているので、この領域をCD46分子結合領域(M73260、30956-31798)と変換した。そこで、GFP遺伝子を用いてヒト膵がん細胞における遺伝子導入効率を検討すると、タイプ5型よりタイプ35型に変換したベクターの方が優れていた。しかし、膵がんにおいては、他の腫瘍とは異なり、CAR発現レベルとタイプ5型、CD46発現レベルとタイプ35型の遺伝子導入効率は、かならずしも一致しなかった。上記ベクター系を使用して、アデノウイルスのE1AおよびE1B遺伝子を外来性転写調節領域で制御しうるウイルスを作製したところ、変換型ウイルスはCAR発現が低い腫瘍に対して、対応するタイプ5型よりも強い殺細胞効果を示したが、CAR発現が高い細胞では殺細胞効果はタイプ5型とほぼ同様であった。また、感染細胞におけるE1A蛋白の発現レベルと、殺細胞効果とは必ずしも一致せず、同効果は各細胞のウイルス増殖を規定するNF-1等の因子によって左右される可能性が示された。
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