研究課題
基盤研究(C)
本研究は、消化管炎症に対する応答としての腹腔内細胞交通と、それらの細胞の産生する分子の役割を明らかにすることを目的とした。1 炎症局所に動員される細胞の同定:マウスに、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を注腸して炎症を誘導すると、漿膜側に凝集したのはマクロファージ(MΦ)であった。2 急性腸炎誘導後の腹腔内の細胞構成の変化:炎症誘導後、成熟腹腔MΦが消失し未熟血球系細胞が増加した。3 動員される細胞の由来:ナイーブマウスから腹腔MΦ細胞を分離し、同種マウスに移植するとTNBS腸炎誘導後大腸炎症局所、特に穿孔潰瘍の部分に細胞凝集塊を作るが、腸管壁内へ浸潤することはなかった。4 細胞動員機序の解明:炎症局所の漿膜側に動員された細胞のケモカイン及びその受容体遺伝子発現を解析したところCCR8の発現が強く亢進していた。LPS刺激により、CCLI及びTGFスーパーファミリー分子アクチビンの高い分泌が腹腔MΦに見られた。これらの事から自己分泌したケモカインに対する受容体を高発現する事により、腹腔内マクロファージは傷害の起こった部位に凝集すると考えられた。5 MΦ凝集のiv vitro実験系の確立:マウス中皮細胞を単層培養し、更に腹腔MΦを加えて混合培養した。ここにCCLI及び炎症性サイトカインを加えると中皮細胞を巻き込んだ細胞塊を形成した。これは抗CCLI抗体により抑制された。6 In vivoにおける阻害実験:腸炎による腹腔MΦの大腸への付着と病変部での凝集は、抗CCLI中和抗体投与群で強く阻害された。腹腔MΦの中皮細胞を巻き込んだ細胞塊形成は、消化管穿孔や外科侵襲など、ストレスが体の深部に及んだ時の防御機構として有効に作用していると考えられる。今後CCLI/CCR8の阻害剤の開発により、過剰な炎症の抑制や、癒着等の腹膜病変の予防が可能であると考えでいる。
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